医療から行動経済学を再考する【電子版】

- 出版社
- メジカルビュー社
- 電子版ISBN
- 電子版発売日
- 2026/03/30
- ページ数
- 168ページ
- 判型
- A5
- フォーマット
- PDF(パソコンへのダウンロード不可)
電子版販売価格:¥2,970 (本体¥2,700+税10%)
- 印刷版ISBN
- 978-4-7583-2303-1
- 印刷版発行年月
- 2026/04
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- 対応OS
-
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概要
「エビデンスを示しても,なぜか伝わらない」
現場で繰り返されるこの違和感を,相手の理解不足や意志の弱さで片づけていないだろうか。
本書は,それを「人間の意思決定の構造」として読み解く,行動経済学実践書である。
構成は大きく4段階。
第0章では,錯視などの身近な例を通して,私たちの認知がいかに容易に歪むかを体感する。
第1章では,価値・確率・時間といった数字ですら主観的に変形されることを,プロスペクト理論や現在バイアスを手がかりに整理する。
第2章では,選択肢の並べ方,社会規範,デフォルト設定など,意思決定が「文脈」に強く依存する構造を明らかにする。
第3章では,それらの理解を土台に,行動変容を促す「仕掛け(デザイン)」を体系化。説得に頼らず,再現性のある介入設計の枠組みを提示する。
最終章では,精密ナッジや実装科学といった最新の潮流にも触れ,個別最適化と社会実装の可能性を展望する。
本書の特徴は,「こころ(直感)」「アタマ(理論)」「仕掛け(設計)」という3つの視点を往復しながら理解を深める点にある。
直感で共感し,理論で整理し,構造として実装する——そのプロセスを通して,「説明しても伝わらない」という課題を,個人の問題ではなく,設計可能な,介入できる問題へと変える。
理論紹介にとどまらない,診断から介入設計,そして実装までを学び,意思決定支援と行動変容を,精神論ではなく構造として捉え直すための一冊。
目次
本書の歩き方
0眼は口ほどに「嘘」をつく
認知バイアスの正体~準備体操~
【直感への問い】見えているものは本当に同じか?
【現象の自覚】理屈をわかっていても脳は勘違いする
【論理的解明】なぜ錯覚は修正できないのか
【臨床現場から】私たちは患者情報を「補正して」見ているという前提に立つ
I 「数字」ですらそのまま理解できない自分
主観的感覚と客観的事実のズレ(理論の理解➀:内的診断)
01【価値の歪み】1万円の重さは「量」と「基準」で変わる?
【直感への問い】数字は同じでも,価値は同じじゃない
【現象の自覚】私たちは「量」ではなく「重み」で判断している
【論理的解明】金額より効用? 効用って何?:効用関数で理解する
【臨床現場から】患者の満足も「限界効用逓減」するからこそ「参照点」の視点は欠かせない
02【利得と損失の歪み】喜びよりも「悲しみ」のほうが2倍大きい?
【直感への問い】なぜ,得する賭けを避けてしまうのか
【現象の自覚】プロスペクト理論の価値関数は我々の心を直感的に表す
【論理的解明】損失は,利得の約2倍痛い
【臨床現場から】患者は「損失局面」で意思決定している
03【確率の歪み】「0%」と「100%」は特別?
【直感への問い】なぜ「1%の違い」が,天と地ほど違って感じるのか
【現象の自覚】私たちは「両端の1%」にだけ過剰反応する
【論理的解明】確率は逆S字に歪んで感じられる
【臨床現場から】患者の不安は「確率」ではなく「状態」に反応している
04【時間感覚の歪み】「明日やる」=「永久にやらない」?
【直感への問い】なぜ「来年の1週間」は待てるのに,「今の1週間」は待てないのか
【現象の自覚】人は「今」が絡んだ瞬間,別人になる
【論理的解明】時間の価値は,直線ではなく“崖”で落ちる
【臨床現場から】「わかっているのにできない」は,診断可能な現象である
II文脈(Context)に依存する自分
社会・規範と環境の影響(理論の理解➁:外的診断)
01【選択肢の影響】脳は「絶対評価」ができない?
【直感への問い】なぜ,高いと思っていた1万円が「ちょうどよく」見えるのか
【現象の自覚】評価は「隣に何があるか」で決まる
【論理的解明】人は絶対評価できず,相対評価しかできない
【臨床現場から】選択肢の並べ方が,診療方針を変えてしまう
02【初期値の影響】人は「現状維持」の引力に勝てない?
【直感への問い】なぜ,見てもいないサブスクを払い続けてしまうのか
【現象の自覚】評価は同じでも,初期設定が行動を分ける
【論理的解明】デフォルトは,最小抵抗経路で人を動かす
【臨床現場から】医療は「デフォルトだらけ」でできている
03【社会の影響】「誰が言ったか」が情報の価値を歪める?
【直感への問い】なぜ,行列のラーメン屋を信じてしまうのか
【現象の自覚】「n=10,000の統計」が「n=1の口コミ」に負ける理由
【論理的解明】人間は「社会の中」で考える生き物である
【臨床現場から】医療は「社会的情報」で動いている
III介入するための仕掛けのデザイン
行動変容を加速させる「5つの設計(デザイン)」
00【介入強度のデザイン】介入するとは自由を奪うこと?
【直感への問い】「頑張れ」だけで終わってない?
【現象の自覚】介入の「強度」と「自由」と「コスト」―介入のはしご
【論理的解明】自由と介入効果のトレードオフ
【臨床現場から】「教える」から「整える」へ―選択アーキテクトとしての振る舞い
01【選択アーキテクチャのデザイン】
その介入は透けて見えているか?
【直感への問い】気づくと「理想的なヘルシープレート」?
【現象の自覚】「お皿」が語りかける,いや強制的なメッセージ
【論理的解明】 行動は「環境」によって設計できる:選択アーキテクチャ(Choice Architecture)
【臨床現場から】「人が悪い」のではなく「構造」を診断する
02【自律的コミットメントのデザイン】
未来の自分を信じているか?
【直感への問い】明日の自分を信じるためには?
【現象の自覚】未来の自分を信じない。自分で自分を縛る
【論理的解明】未来の自分を縛るという発想―コミットメント・デバイスの正体
【臨床現場への示唆】自分を縛れるなら縛ってみたらいい
03【認識フレーミングのデザイン】「見せ方」で評価が逆転する?
【直感への問い】Asian disease problemのクイズ
【現象の自覚】100%(確実)に,期待値以上の安心と魅力を感じる
【論理的解明】フレーミング:情報の「枠組み」がインセンティブを書き換える
【臨床現場から】数字の「枠組み」が,命の優先順位さえ書き換える
04【再現性を生む実装のデザイン】フレームワークは何のため?
【直感への問い】知識は増えても使えなければ意味がない?
【現象の自覚】いきなりアクションから入るべからず
【論理的解明】フレームワーク:再現性のあるデザインへ
【臨床現場から】言葉・単語からフレームワークへ:理解から深める介入の深化
IVこれからの介入方法・研究デザインを探索する
精密ナッジと実装科学(予後管理と未来の展望)
01【平均値の罠】目の前の患者は,本当に「平均値」の中に存在するか?
【直感への問い】統計的な「正しさ」は,個人を前にしても同じか?
【現象の自覚】「平均」という名の透明な壁
【論理的解明】よかれと思った介入でも個人の特性によって効果が変わる
【臨床現場から】理論と現場の乖離を理解する
02【実装科学とPDCA】ナッジを「文化」にするまでに…
【直感への問い】なぜ,正しいはずの施策が現場で「蒸発」するのか?
【現象の自覚】「個人の声」と「ジョブ」を聞き逃していませんか?
【論理的解明】PDCAをアップデートする―実装科学という考え方
【臨床現場への示唆】「対話」という名の質的評価が,実装の壁を突破する
03【「操作」から「自律支援」の未来へ】デジタルが拓く精密医療の到達点
【直感への問い】AIが個人の「行動のOS」を書き換える時代?
【現象の自覚】「ハックされる自分」を逆手に取り,「環境をハックする自分」へ
【論理的解明】「操作」から「自律支援」へ―テクノロジーと人間性の融合
【臨床現場から】現場で学び現場を改善していく
Column
脳の中に住む「2人の自分」
数字とデジタルの関係
個人の選好
なんとなく2桁から3桁ぐらいがちょうどよいパーセント
あなたは「無自覚」な楽観主義者? それとも「自覚的」な戦略家?
「今」って何秒ぐらい続く?
順番と数
デフォルトと経路依存―「今」の設計か,「過去」の引力か
孤立と共鳴―ネットワークが規定する「情報の重み」
介入のはしごと仕組みと仕掛け
減塩から「置換」へ―進化する生活習慣改善のデフォルトの可能性
自己責任論と選択可能なコミットメント
なぜ私たちは「名前」を付けるのか―記憶の回帰に抗うための生存戦略
抽象化の罠
PDCAの進化-連続性と断絶の間で
医療イノベーションの分水嶺-「努力」を「介入」が上書きする日
