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ナイチンゲール助産論【電子版】

Introductory Notes on Lying-in Institutions

金井 一薫 (著・訳)

徳島文理大学大学院看護学研究科・教授/東京有明医療大学看護学部・名誉教授/ナイチンゲール看護研究所・所長

Florence Nightingale

出版社
現代社
電子版ISBN
 
電子版発売日
2024/09/27
ページ数
175ページ
 判型
菊版
フォーマット
PDF(パソコンへのダウンロード不可)

電子版販売価格:¥2,750 (本体¥2,500+税10%)

印刷版ISBN
978-4-87474-203-7
印刷版発行年月
2024/08
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2
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概要

本書は、ナイチンゲールの膨大な印刷文献の中で、これまでほとんど知られていなかった『産院覚え書・序説』(Introductory Notes on Lying-in Institutions)の翻訳書です。

ナイチンゲールは、1862年に英国で始めて助産師訓練学校を開設し、助産師を女性の専門職のひとつとして誕生させました。しかし産科病棟に産褥熱が蔓延したため、病棟も学校も閉鎖を余儀なくされてしまいました。長年の夢が打ち砕かれたナイチンゲールは、産褥熱発生の実態調査に乗り出しました。健康な産婦がなぜ産院で死ななければならなかったのか? 彼女はヨーロッパ中の産院の現状をつぶさに把握し、その死亡率は自宅で分娩する産婦の死亡率よりも高いという事実を知りました。
 そこでナイチンゲールは、理想的な産院構造を示すとともに、産院における設備のあり方やその管理の仕方に至るまで、細かな指摘をしています。さらに新たに助産師訓練学校を開設するとすれば、いったいどのような教育が理想なのかについても熱っぽく語っています。
 本論文からは、ナイチンゲールが描く理想的な助産師像を読みとることができます。その理想は、現代の助産師界にとっても新鮮で、消えることのない本質的なものです。
それは助産所で自立して働く助産師に希望と方向性を与えてくれるものであり、日本の助産師界の今後の方向性を思考するうえで限りなく参考になるものと推察されます。
さらに、ナイチンゲールが看護師訓練学校とは切り離して助産師訓練学校を開設したことで、その後、世界の助産師教育の潮流は、英国を筆頭に、看護師教育とは分離して行われているという事実にも、関心を寄せる必要があります。

翻訳文の前に、訳者・金井一薫による「訳者・論考」が記されています。本書を読む方々は、論文の時代背景や当時の英国の助産事情など、詳しい解説を読むことで、本書への理解が進み、ナイチンゲールの意図がよりスッキリと頭の中に入ってくるでしょう。

 ナイチンゲールの言葉
「助産師とは、科学的かつ実践的な訓練を受けて、必要時には相談・助言を受けながら、正常・異常を問わず、あらゆる分娩事例を、産科医と同様に取り扱うことができる女性のことを指します。このような訓練は、2年以内に終わらせることはできません。」

目次

『産院覚え書・序説』訳者 論考
1.はじめに
2.『産院覚え書・序説』の構成とその特性
  (1)第1部について
  (2)第2部について
  (3)「補遺」について
3.『産院覚え書・序説』が書かれた時代背景
  (1)当時の英国の医療と助産事情
  (2)感染症の実態と対処法
4.ナイチンゲールの助産師教育に対する理念
  (1)必要とされた助産師養成と教育のレベル
  (2)助産師訓練学校の具体的訓練システム
5.『産院覚え書・序説』を通して見えるナイチンゲールの先見性
  (1)理想とする産院の設計図を提示
  (2)当時の「産科統計」の不備を指摘し、「事例記録書式」を考案
6.ナイチンゲール没後の助産師教育の2筋の流れ
  (1)英国の助産師教育の流れと特徴
  (2)アメリカ合衆国の助産師教育の流れと特徴
  (3)日本の助産師教育の流れと特徴
7.考察―現代の助産師教育の実相を踏まえて
文献
パビリオン式病棟の特徴


『産院覚え書・序説』
序 文

第1部
1.通常の産婦の実際の死亡率はどの程度なのか
2.助産関連統計
3.英国における産婦の通常の死亡率
4.各国における通常の産婦の死亡率
5.データに対する反論
6.家庭内出産死亡率の推定値
7.産院における死亡率
8.救貧院における死亡率
9.産院における死亡率の背後にある死因の分類
10.産院における高い死亡率の諸原因
  (1)産褥熱について
  (2)訓練生の受け入れについて
  (3)数の効果について
  (4)産褥熱流行の危険性について
  (5)総合病院の産科病棟における死亡率について
11.産科病棟の建築設計と管理が死亡率に与える影響
  (1)パリの産院について
  (2)パリの診療病院について
  (3)ロンドンのクイーン・シャーロット産院について
  (4)キングス・カレッジ病院の産科病棟について
12.改良された産科病棟がもたらした結果
  (1)各地の陸軍女性病院について
  (2)ポーツマス新女性病院の建設案について
13.医学生に産院の実習を許可できるのか?
14.産科病棟に入院する期間が死亡率に及ぼす影響
15.優れた管理がもたらす産院施設の適正運営
16.陸軍産科病棟の運営管理
17.要約
18.産院施設の配置や管理は改善できるか?

第2部
1.産院ならびに助産師
―助産看護師訓練学校の建設と組織運営
2.産院施設の構造
  (1)1病室あたり何床とするか?
  (2)各階あたり何病室とするか?
  (3)1パビリオン(翼)あたり何階建てとするか?
  (4)1パビリオンまたは1木造小屋あたりのベッド数はいくつとするか?
  (5)1産院施設あたりのパビリオン数または小屋数はいくつとするか?
  (6)1床あたりに必要な空間はどのくらいか?
  (7)1床あたり窓はいくつ必要か?
  (8)健康な壁と天井と床とは?
  (9)健康で明るい分娩室とは?
  (10)洗い場、洗面所、トイレ
  (11)産院の換気はどのようにすべきか?
  (12)家具、寝具、リネン
  (13)給水、排水、洗濯
  (14)医務官の部屋と待機室
  (15)隔離棟
  (16)厨房(キッチン)
  (17)場所について
3.運営管理
  (1)基本原則1
  (2)基本原則2
  (3)基本原則3
  (4)基本原則4
  (5)基本原則5
4.助産師訓練学校
  (1)助産師訓練学校の運営管理
  (2)提案したい産院施設の設計略図と説明
  (3)30名の訓練生のための助産師・助産看護師訓練学校を併設している40床(32~36床)規模の産院施設

補遺
―教育を受けた女性の職業としての助産師
1.専門職としての助産師育成
2.助産師訓練校についての具体的提案