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医療現場の共感力【電子版】

石井 均 (編著)

奈良県立医科大学

出版社
金芳堂
電子版ISBN
 
電子版発売日
2023/03/22
ページ数
239ページ
 判型
A5
フォーマット
PDF(パソコンへのダウンロード不可)

電子版販売価格:¥3,960 (本体¥3,600+税10%)

印刷版ISBN
978-4-7653-1931-7
印刷版発行年月
2023/01
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概要

本書では広く論文や書籍をレビューし,医療における共感とはどんな機能/概念かを示した.また,共感現象の理解に大きく寄与する脳科学研究の成果を紹介した.共感の原点は実際の臨床場面にあり,その場で医師(医療者)―患者間で取り交わされた相互作用とそれがもたらす結果について,糖尿病,がん,認知症,腎臓病を持つ人との関わりを通じて提示した.最後にその測定法について医師側と患者側からの評価尺度を紹介した.

目次

はじめに

第Ⅰ部 共感概念と医療
第1章 糖尿病医療の体験から得た共感の役割
1.糖尿病医療の難しさを感じ経験する
2.浮かび上がってきた糖尿病医療の課題
3.行動変化に関わるときの医療者の基本姿勢
4.臨床の場から―医療者の基本姿勢が変わると患者はどう変わるのか
1)提案した治療法に抵抗(拒否、ネガティブな姿勢)を示す場合
2)相手の考えや感情、生活(史)を知ることで問題が自然に解けてくることがある―共感
5.医療コミュニケーションの視点から
1)傾聴と共感:語ってもらうための条件―聴くということ
2)医療者―患者コミュニケーションはどう患者を癒すのか
第2章 共感の諸要素と知識
1.共感を構成する4要素(4機能)
1)代表的な総合的定義
2)共感を構成する4要素(4機能)の詳細
2.共感現象をより深く理解するための知識
1)自他の区別、個人的苦悩と共感的苦悩
2)Emotion regulation(感情・情動制御)
3)Flexibility;共感の状況依存性
4)共感とsympathy、compassionとの違い
5)共感が備えるべき本質的特性
6)共感の脳科学研究で明らかになったこと
第3章 他人の視点を学ぶ脳
1.序 コミュニケーションと共感性―ジョハリの窓と相互認識のモデル
2.外身体脳(外感覚および外側運動系)―ミラーシステムと言語と非言語
3.内身体脳(内感覚および内側運動系)―情動的共感と愛着
4.皮質下情動脳(扁桃体と基底核)―接近と回避、安全基地と探索の学習
5.記憶脳(海馬依存性と非依存性)―エピソード記憶と意味記憶と暗黙的記憶
6.注意脳(視線制御)―共同注意と指差しによる身体的対話
7.価値脳(眼窩前頭前野)―価値判断と自尊心
8.認知脳(外側前頭前野)―左右差による言語と非言語・共感性の乖離
9.社会脳(内側前頭前野)―認知的共感性
10.多様な共感性(empathyからcompassionへ)
第4章 医療における共感の実際と効果
1.医療場面における共感の実際
1)共感と相互反応的コミュニケーションモデル
2)共感サイクル
3)共感の双方向性
4)共感と受容のための支持的な聞き方
2.共感はなぜ有用なのか、および医療的効果
1)他者(対象者、患者)に起こる変化
2)共感の医療/医学的効果
3.共感のリスク・問題点と対策
第5章 糖尿病医療における医師(医療者)―患者関係〜見立てを軸とした共感〜
1.医学を出発点にしたアプローチ
2.患者の人間理解を出発点にしたアプローチ
1)存在beingと行為doingの次元による人間理解
2)糖尿病を持つ人の存在beingと行為doingの次元
3)生きる在り様を見立てる
3.どのように聴くのか
1)言葉になるのを共に待つ姿勢
2)言葉に留まる姿勢
3)物語の視点
4)こころのテーマを見立てる
4.医療者の在り方
5.医療者と治療者の「あいだ」
6.おわりに
第6章 今、医療で必要な共感とは何か
1.医師(医療者)―患者関係の在り方と共感の重要性の変遷
2.医療者に必要な共感要素に対する見解の違い
3.まとめ

第Ⅱ部 実臨床における共感はどのようなものか
第7章 糖尿病症例:認知症と糖尿病を持つ人のケアと共感
1.症例の概要
2.経過
3.考察
第8章 症例から考える腎不全を持つ人における共感の意味
1.症例
2.考察
3.おわりに
第9章 認知症ケアに役立つ共感
1.認知症ケアと共感
2.共感に伴う支援者の変化
3.共感と認知症ケア従事者の育成
4.おわりに
第10章 認知症の人とのよりよい人間関係の構築のために―パーソン・センタード・ケアの視点から
1.症例の概要
2.経過
3.考察
第11章 がん症例 末期患者が手に入れた自己
1.症例の概要
2.治療経過
3.まとめ
第12章 がん症例(急性骨髄性白血病)治療選択と共感
1.急性骨髄性白血病の治療方針と予後
2.症例
3.考察
4.最後に
第13章 がん治療(ケア)における共感とは
1.がんを持つ人の心理
2.カウンセリングと共感
3.共感と対等性
4.共感によってはぐくまれるもの
5.共感疲労
6.症例を通じて
7.まとめ

第Ⅲ部 共感の測定尺度
第14章 Jefferson Scale of Empathy(JSE)
1.共感(empathy)の定義と医学における位置づけ
2.共感を評価する指標:Jefferson Empathy Scale(JSE)
3.米国におけるJSEを用いた共感の評価
4.日本の医学生の共感に関する横断調査
5.医学教育においてどのように共感を涵養するか:医学生の共感に関する縦断調査
6.医師(医療従事者)と医療系学生の共感
7.共感と臨床アウトカム
8.おわりに
9.補遺:Jefferson Scale of Empathyの使用許諾ついて
第15章 CARE Measure
1.共感を測定する質問紙CARE Measure
1)開発の背景
2)共感の定義
3)日本語版CARE Measure
2.バリデーションの要約、およびこの質問紙を使った研究成果
1)注意点
2)連絡先
3.使用にあたっての注意点や連絡先

索引