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脳血流量は語る ―かくれた謎をひも解く―【電子版】

菅野 巖 (著)

量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部

出版社
中外医学社
電子版ISBN
 
電子版発売日
2020/07/20
ページ数
198ページ
 判型
A5
フォーマット
PDF(パソコンへのダウンロード不可)

電子版販売価格:¥4,400 (本体¥4,000+税10%)

印刷版ISBN
978-4-498-32840-2
印刷版発行年月
2020/07
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概要

脳の疾患や健康状態を表す脳血流量は,脳機能を支えるインフラである.それゆえ脳疾患の診断ツールにはなりえても,マイナーな存在であった.しかしイメージング技術の発展と共に,脳血流量には「揺らぎ」があることが判明.この揺らぎが,脳の神経細胞の活動領域に対応していることが分かってきた.寡黙と思われていた脳血流量が,実は脳の活動を雄弁に語っていた代弁者であった.本書はその語りから,脳の秘密をひも解いていく.

目次

目 次

はじめに
読者の皆様へのご案内

1 プロローグ
 A 脳血流量から見える世界
 B 待望される異次元のモデル
 C 筆者が脳血流量測定を始めた時代

2 脳血流量の素顔
 A 酸素の大食漢を養う脳血流量
 B 脳のゴミを掃除する脳血流量
 C リモート制御される脳血流量
 D 疾患や加齢を映す安静時の脳血流量
 E 神経活動を映す脳血流量のゆらぎ
 F 偶然に発見された内因性信号
 G 神経活動の実験には邪魔だった脳血流量
 H 損傷には過敏な脳血流量

3 脳血流量の通り道:脳血管
 A 構造と基本性能
  a.血管の構造
  b.血管径と血圧と流速
 B 脳血管とその周辺組織
  a.脳を守る血液脳関門(BBB)
  b.BBBの障害と脳浮腫
  c.神経細胞と脳血管を連結する神経血管単位(NVU)
  d.神経細胞を支えるグリア細胞
  e.微小血管を補佐するペリサイト(周皮細胞)
 C 脳動脈と脳静脈それぞれの役割
  a.脳血管ネットワーク
  b.主幹脳動静脈の役割
  c.脳表動脈と穿通動脈の役割
  d.緊急時に作動する側副血行路
  e.灰白質と白質で異なる毛細血管密度
 D 赤血球による酸素交換
  a.ヘモグロビンの酸素化と脱酸素化
  b.肺循環と体循環の役割
  c.酸素解離曲線
  d.ヘマトクリット値

4 脳血流量を測る:歴史
 A 脳血流量測定の黎明期
  a.脳容積の変化を測定する試み
  b.脳血流量の数量化の試み
 B 不活性ガスによる脳血流量の定量化
  a.笑気ガスによる定量化
  b.笑気ガスの麻酔効果
  c.RIトレーサーというブレークスルー
  d.新しい方法を開発できた背景
  e.キセノン133脳血流量の日本への導入
  f.キセノン133の限界
 C トモグラフィー装置の開発
  a.トモグラフィーの夜明け
  b.筆者らの試み
  c.高速SPECTの盛衰
 D 非侵襲化は時代の流れ
  a.RI導入の先見性
  b.時代と共に変化する「侵襲的」の定義
  c.PETとSPECTは実用化へ

5 脳血流量を測る:理論
 A 通路を流れる道流と灌木叢を流れる灌流
  a.道流と灌流の単位
  b.通路を流れる道流の測定
  c.灌木叢を流れる灌流の測定
  d.道流から灌流へ:ミクロからマクロへの融合
 B 血流量測定に使用されるトレーサー
  a.拡散性トレーサー
  b.非拡散性トレーサー
  c.マイクロスフェア型トレーサー
  d.ケミカルマイクロスフェア型トレーサー
 C 脳血流量を計算する
  a.脳血液分配係数(p)
  b.初回通過摂取率(E)
  c.トレーサーの平均通過時間から計算する
  d.トレーサーの分布密度から計算する
  e.絶対値測定と相対値測定
  f.集積分布の半定量的評価
 D 核医学のかなめ:RIトレーサー
  a.トレーサーアマウント
  b.比放射能
  c.トレーサーかプローブか
  d.核医学の測定感度は高いか
 E トレーサーをまとめるコンパートメントモデル
  a.トレーサーが分布する仮想部屋:コンパートメント
  b.酸素15ガス吸入法のコンパートメントモデル
  c.神経受容体のコンパートメントモデル
  d.トレーサーのインプット関数

6 脳血流量を測る:方法
 A SPECTによる脳血流量の測定法
  a.キセノン133による定量的脳血流測定法
  b.ヨウ素123標識IMPによる定量的脳血流量測定法
  c.ケミカルマイクロスフェア型トレーサーによる測定法
 B PETによる脳循環代謝の測定法
  a.超小型サイクロトロンの登場
  b.PET装置の実用化
  c.酸素15標識ガス定常吸入法測定法
  d.酸素15標識ガス短時間投与法測定法
 C RIを使わない脳血流量測定法
  a.コールドキセノン吸入法
  b.MRIによる動脈血スピン標識法(ASL)
  c.CTやMRIの血管造影剤による測定法
  d.近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による
  e.超音波による道流の測定法
 D 動物実験での脳血流量測定法
  a.水素クリアランス法
  b.オートラジオグラフィ(ARG)法
  c.透過光の平均通過時間による脳血流量測定法
  d.レーザードプラー血流計(LDF)
  e.レーザースペックルイメージング(LSI)
  f.共焦点顕微鏡と二光子励起顕微鏡

7 脳を守る脳血流量
 A 脳血流量を調節するメカニズム
  a.頭蓋内の脳血流量調節
  b.微小循環での脳血流量調節
 B 健康脳の脳血流量調節
  a.灌流圧調節(自動調節機序)
  b.化学性調節
  c.神経原性調節
  d.代謝性調節
 C 脳血管障害時の脳血流量
  a.貧困灌流と贅沢灌流
  b.循環予備能と代謝予備能
  c.脳梗塞の脳血管閉塞のタイプ
  d.脳血流量の再灌流治療
 D 脳組織が異常時の脳血流量
  a.ノーリフロー現象
  b.脳神経変性疾患における脳血流量
  c.異常たんぱく質集積による認知症の脳血流量
  d.血管性認知症の脳血流量

8 脳を写す脳血流量
 A 神経活動と連動する脳血流量
  a.フィードバック機序
  b.フィードバック機序のほころび
  c.神経活動時の好気的解糖について
  d.フィードフォワード機序の台頭と
 B BOLDコントラストという新大陸の出現
  a.BOLDコントラストの発見
  b.BOLDコントラストの本質
  c.BOLD信号は天からの贈り物
  d.BOLD信号によるパラダイムシフト
  e.BOLD信号のダイナミックレンジ
 C 神経活動と脳血流量を結ぶミッシングリンク
  a.脳血流量は神経活動を代弁するか
  b.脳血流量信号と神経活動の比較
  c.脳血流量信号の時空間分布
  d.脳血流量信号の加算法則
 D 安静状態が厄介者から新鉱脈へ
  a.頭痛のタネだった安静状態
  b.安静状態が切り開く新世界

9 エピローグ
 A 熱気のシフト
 B 脳活動の表現形
 C 残る疑問点
 D 氷山の一角
 E 未知の鉱脈
 F おわりに

参考文献
引用文献
基本用語
脳血流量測定に深く関わった人物
索引