Less is More 考える集中治療
集中治療分野では「重症だから……」という理由だけで、詳細な病態や適応の評価もそこそこに、惰性的に、様々な薬剤投与、度重なる膨大な検査などが行われていることがあります。しかし、それは患者にとってデメリットでもあることを知っておきましょう。
ヨーロッパの集中治療医学会雑誌Intensive Care Medicineの「less is more」をもとに、日本の実情も踏まえながら、今後の医療の質を変えてみませんか?
――すべてのものは毒であり、毒でないものはない
パラケルスス(スイス人医師、1493~1541)
我々医療者の行為には、侵襲的なものや、効果効能が疑問視されているものも存在します。そして、それらはもれなくコストやマンパワーも必要とします。時にその有害性が命を脅かすことも稀ではありません。こと集中治療においては「重症だから」という理由だけで、詳細な病態や適応の評価もそこそこに、安易な薬剤投与や連日の検査などの医療的介入が行われることをよく目にします。しかし過度な医療行為は、パラケルススの言った通り「毒であり」、過ぎたるは及ばざるが如しであるということを肝に銘じなければなりません。すなわち、“less is more”な管理を行うことの価値を知る必要があります。そこで本書は、海外の集中治療系“Choosing Wisely”とヨーロッパの集中治療医学会雑誌『Intensive Care Medicine』の特集である“less is more”シリーズの内容を紹介しつつ、最近の知見を踏まえて、世界標準のシンプルかつスタンダードな管理を提唱することを目的として企画しました。
と、偉そうに書いていますが、正直に言うと、集中治療専門医として第一線で活躍されている先生方にはほぼ常識といえる内容です。ただ日本では集中治療専門医の数はまだまだ少なく、非専門医の先生が探り探りの集中治療を行っていることも多いと思います。研修医の先生においては、重症管理に精通して手取り足取り教えてくれる指導医がいないかもしれません。そんな先生方に向けて、本書から「ICUだからといって肩ひじ張らず、必要な介入をシンプルに行えばよい」というメッセージを感じてもらえればと思います。もちろん第一線の集中治療専門医の先生方にとっても、日頃のプラクティスを見直す機会となれば幸いです。また筆者自身もまだまだ勉強中の身でありますゆえ、本書を叩き台として忌憚なきご意見・ご指導をいただければと存じます。
“less is more”とは、シンプルなもののほうが、高度なものや複雑なものよりも優れている、という意味合いで使われる表現で、何かをやり過ぎてしまうことへの危惧がこの考え方の背景にあります。このフレーズは“God is in the details.”(神は細部に宿る)というモットーを掲げたことでも知られるドイツ人建築家のルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886~1969)が遺した言葉とされています。多くのデザイナーがこの言葉にインスピレーションを受け、シンプルでありながら美しいものをデザインするという一つの表現が生まれたそうです。
医療においても同様で、余計なものが多すぎると本質的なものを見失ってしまう可能性があります。我々医療者も、洗練された患者プランを提案できるデザイナーとなり、真に重要なことに集中することが望まれます。
2021年8月
57年ぶりの東京オリンピックのかたわら、毎年変わらぬ蝉の声を聞きながら
静岡県立総合病院集中治療センター集中治療科/急変対応科
太田啓介
産婦人科の実際 Vol.66 No.11
2017年10月臨時増刊号
【特集】ガイドラインのすき間を埋める!臨床医マエストロの技
【特集】ガイドラインのすき間を埋める!臨床医マエストロの技 ガイドラインには書かれていない診療方法や手技を,産婦人科における”臨床医マエストロ”が紹介しています。まさに,ガイドラインのすき間を埋める一冊です。
初期研修医の今からはじめるDoctor's English
【頻出略語や文法、場面別英会話まで網羅!】日本における診療・研究・教育のいずれにおいても、英語は必ず必要である。にもかかわらず、英語が苦手な医師は多い。将来何を専門にするにしても、活躍のチャンスは英語が切り札になる。そのためには、特に時間がある初期研修医のうちに勉強をスタートするのが吉。毎年、多くの医学部合格者を輩出し、医師のOBも多い進学塾・鉄緑会での受験英語指導と、医学部生・研修医への英語実践指導実績をもつ著者が贈る、医学英語のエッセンスが詰まった珠玉の1冊。
眼科 Vol.67 No.13
2025年12月号
ぶどう膜網膜炎の画像診断検査―基本から最新の知識まで―
ぶどう膜網膜炎の画像診断検査―基本から最新の知識まで―
今月はぶどう膜網膜炎の画像診断検査の特集です。眼底造影検査から光干渉断層計(OCT)、そして自発蛍光やOCT angiographyまで、マルチな手法を駆使して後眼部の炎症を高精度で鑑別診断するために必要な基礎知識と最新情報が満載です。サイトメガロウイルスによる眼内炎症の綜説と併せて是非ご覧ください。ほかに老視矯正眼内レンズの動向やアフリベルセプト8 mg製剤の情報、投稿論文3篇など、来年の準備をしつつご一読いただければ幸いです。
所見から考えるぶどう膜炎 第2版
圧倒的な質と量の症例写真で評価・鑑別のプロセスをわかりやすく解説
原因が多彩で鑑別診断が難しいぶどう膜炎をテーマに、“所見”をベースに評価・鑑別のプロセスと注意すべきポイントを示した好評書、待望の改訂版。初版の内容から写真を大幅に追加・変更しパワーアップ。「multiplex PCRの応用」「免疫チェックポイント阻害薬によるぶどう膜炎」など最新のトピックスもフォローするなど、臨床医が“今”知りたい内容へと生まれ変わった。
眼内腫瘍アトラス
前作『眼瞼・結膜腫瘍アトラス』に続く、眼内腫瘍の診断と鑑別のための臨床所見アトラス。眼内腫瘍は頻度はまれながらも、見逃すと生命予後に直結することも多く眼科医にとって重要な疾患です。本書は眼腫瘍診療のエキスパートである著者が、多くの所見をバリエーション豊かに紹介。まれな疾患だからこそ、見て慣れておく。典型例ばかりでないから、バリエーションを知っておく。本邦オリジナルの眼内腫瘍アトラスの決定版、ここに誕生。
≪リハの流れが見える≫
高次脳機能障害リハビリテーションの流れが見える
脳の構造・機能の基本から高次脳機能障害の病態,症状の多様性までよくわかる!症例をもとに日常的な困りごとと関連づけながら評価→介入→検証の流れも具体的に学べる.初学者から現場PT・OTまで長く使える一冊
総合診療 Vol.31 No.8
2021年8月発行
特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来 精神科医にぶっちゃけ相談してみました。
特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来 精神科医にぶっちゃけ相談してみました。 ①独自の切り口が好評の「特集」と、②第一線の執筆者による幅広いテーマの「連載」、そして③お得な年間定期購読(医学生・初期研修医割引あり)が魅力! 実症例に基づく症候からのアプローチを中心に、診断から治療まで、ジェネラルな日常診療に真に役立つ知識とスキルを選りすぐる。「総合診療専門医」関連企画も。 (ISSN 2188-8051)
画像診断ガイドライン 2021年版
画像診断専門医のみならず一般臨床医や診療放射線技師も利用しやすい内容となるように5年ぶりの大改訂を行った。全11領域の臨床課題をバックグラウンドクエスチョン(BQ)・クリニカルクエスチョン(CQ)・フューチャーリサーチクエスチョン(FQ)に分類し(BQが92、CQが23、FQが23)、それぞれの科学的根拠、益と害のバランス、患者の希望の一貫性、経済的視点などを踏まえて画像診断の指針を示した。
実践 臨床麻酔マニュアル 第2版
成人から小児まで豊富な症例と実績をもつ自治医科大学麻酔科の経験とスキル,ノウハウを凝縮したマニュアルが最新の知見を反映し10年ぶりに改訂.第2版では,新規項目も追加され,より周術期管理に特化した内容となり,術後疼痛管理についての内容も大幅にアップデートされた.日常診療に直ちに役立つことはもちろん.学生・初期研修医から麻酔科専門医試験を受験する麻酔科医にまで,広く利用できる実用的なマニュアルとなっている.
がん研 肝胆膵外科ビデオワークショップ
ことばと動画で魅せる外科の基本・こだわりの手技
本書は、がん研有明病院 肝胆膵外科で毎月行われている「手術ビデオ勉強会」の内容をもとに、基本手技をマスターするために有用な回を編集し、1冊にまとめたものである。レジデントたちが日頃はなかなか訊けないような手技の疑問を提示し、専門医スタッフが勉強会の臨場感そのままの会話体で、通常の手術書では伝えきれない一つ一つの手技のニュアンスを巧みな言葉と見本動画とシェーマを用いて解説している。コラムでは、専門医スタッフが若手外科医に向けて、手術だけではない外科医としてのキャリアを積んで行くためのヒントとなる論文投稿や海外留学などの経験について語った。肝胆膵外科を志す若手医師にとって必読の書である。
Web動画51本 計117分。
救急医学2025年11月号
消化器“救急”内視鏡―適応と実践
消化器“救急”内視鏡―適応と実践 消化器系疾患に対する重要な救急治療モダリティである緊急内視鏡。その最新の適応と実践的手技、そして多科・多職種連携の勘所を、消化器内視鏡診療のエキスパートが丁寧に解説します。
レジデントノート増刊 Vol.20 No.2
【特集】電解質異常の診かた・考え方・動き方
【特集】電解質異常の診かた・考え方・動き方 電解質異常診療は“緊急性の有無”の判断が重要!各電解質異常の症状から心電図異常,注意すべき薬剤までじっくり解説!さらに,緊急性の有無で分類した症例も豊富に収録,読めば電解質異常診療の経験値がアップ!
救急画像診断 ER Case Book
小説みたいに楽しく読める睡眠医学講義
睡眠研究と睡眠障害診療の双方に長年携わってきた筆者による書き下ろし!睡眠のメカニズムと,睡眠障害の患者さんを診るための基礎知識が楽しく学べます!夢と睡眠との関係や,動物の睡眠,最適な睡眠環境など,気になるテーマが盛り沢山!眠りにまつわるさまざまな悩みや疑問を抱える人にも役に立つ,読む睡眠薬!
睡眠がみえる!
昼間の覚醒の問題を解くカギは夜間の睡眠にあり―.睡眠医学のエキスパート2人による初の詳細な解説付き睡眠医学アトラス.「睡眠をみる目」をあなたに.
≪泌尿器Care & Cure Uro-Lo別冊≫
疾患別 泌尿器科の薬物療法と患者管理
【薬物の治療戦略と患者管理の要点がわかる】
泌尿器科の薬物療法では、治療とケアの多様化とともに新しい薬剤が次々と開発され、各種ガイドラインが見直されている。本書は、薬剤の特性を生かした治療戦略と患者管理、副作用への対応について、医師・看護師・薬剤師が最新の情報をまじえて解説する。
深頸筋膜の解剖学的構造から学ぶ 頸部郭清術
頭頸部癌や甲状腺癌の治療で広く行われている頸部郭清術を系統立てて解説した手術書.本書では臨床の最前線で40年あまり活躍している著者が頸部郭清術の知識や技術を披露する.また従来の術式にこだわらない患者の機能温存に重きを置いた術式を綺麗なシェーマで紹介し,実際に継承されることが難しい技術を解説して新たな選択肢を提供する.
臨牀透析 Vol.40 No.3
2024年3月号
“透析看護”研究,論文発表に繋げよう!
“透析看護”研究,論文発表に繋げよう!
本特集では,看護実践を可視化するためのプロセスとして,看護現場で経験した実践事例をまとめることから論文発表までの取り組みをわかりやすく解説した.
前眼部画像診断A to Z
OCT・角膜形状・波面収差の読み方
前眼部OCT,角膜トポグラフィー,波面センサーについての基礎知識(概念,測定原理,検査目的,測定法)および疾患別の検査結果の見方を解説した書。1つ1つの画像の解読は大事なポイントを検査結果画像に直接指し示しながら,理解しやすいよう簡潔にまとめた。最新の前眼部画像検査も紹介されている。
