J. of Clinical Rehabilitation 29巻12号【電子版】
- 出版社
- 医歯薬出版
- 電子版ISBN
- 電子版発売日
- 2020/12/21
- ページ数
- 100ページ
- 判型
- B5
- フォーマット
- PDF(パソコンへのダウンロード不可)
電子版販売価格:¥2,640 (本体¥2,400+税10%)
- 印刷版ISSN
- 0918-5259
- 印刷版発行年月
- 2020/11
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概要
サルコペニアがRosenbergにより世界で初めて1989年に提唱されて約30年が経過した.その後,病態,診断等の研究が進み,骨格筋量の低下と筋力/身体機能低下をもつ病態としてサルコペニアが定義されるようになった.さらに,サルコペニアは高齢者においてその健康寿命を脅かすだけではなく,さまざまな疾患に関連し,その予後に影響を与えることが明らかとなってきた.これらの研究の進展を受けて,欧州やアジアの各地より専門職によるワーキンググループが立ち上がり,操作的定義や予防,治療の提言がなされるようになった.日本を含むアジアの各国ではAWGSを用いたサルコペニアの診断が多くなされるようになり,サルコペニアの研究が飛躍的に進歩した.さらに2016年にはサルコペニアがICD-10のコード(M62.84)を取得し,国際的にサルコペニアが独立した疾患として認識されるに至った.わが国でも2018年よりサルコペニアがレセプト病名となった.
リハビリテーションにおけるサルコペニアの有病率は比較的高く,約50%である.さらに,サルコペニアはリハビリテーションにおける日常生活動作(ADL)や嚥下障害の改善,自宅退院率等の重要なアウトカムと負の関連がある.健康面では,サルコペニアは,転倒と骨折のリスクを増加させ,ADLの低下,心疾患,呼吸器疾患および認知機能障害に関連する.また,運動障害を引き起こし,生活の質(QOL)の低下,自立性の喪失や長期にわたる介護の必要性,あるいは死亡のリスクとなる.また,サルコペニアに対する治療的介入は運動療法と栄養療法の併用が原則である.しかし,リハビリテーションの領域で適切にサルコペニアがスクリーニング,診断され,治療が行われているとは言い難い.機能障害に対するリハビリテーションの標準的プログラムに加えて,レジスタンストレーニングの処方や,高たんぱく質高エネルギーの栄養サポート,口腔や嚥下管理,薬剤管理等,多職種の連携が重要である.
本特集では,リハビリテーションの医療者が知っておくべき筋疾患としてのサルコペニアの診断,治療,予防について最新の知見をまとめた.いずれの項目も最新情報が掲載されており,いずれの執筆者もこの領域におけるオピニオンリーダーである.多忙の中で執筆していただいた各先生方に心より御礼を申し上げる.サルコペニアはリハビリテーション医療の対象疾患のひとつである.リハビリテーション医療の日常診療でサルコペニアを診断・治療し,医原性サルコペニアを予防することが当たり前になり,高齢者の機能・活動・参加が最大化されることを期待する.本特集がこの領域におけるスプリングボードになれば幸いである.(編集委員会)
目次
サルコペニアと運動療法 山田実
サルコペニアと栄養療法 西岡心大
医原性サルコペニア 百崎良
サルコペニアの嚥下障害 藤島一郎,國枝顕二郎
地域連携におけるサルコペニア対策 若林秀隆
■連載
リハビリテーション職種が知っておくべき臨床統計:基礎から最新の話題まで
2. 統計ソフトの種類 寺岡睦
重度障害、重複障害に対する私のリハビリテーション治療経験
4.運動障害と視覚障害の重複 前野崇
オーストラリアのリハの現場より
第8回 小児慢性疾患の移行期リハビリテーションの現状と課題 渡辺百合子
今伝えたい! 脊髄損傷治療の現状と課題
5. 脊髄損傷と再生医療 緒方徹
筋電図を症例から学ぶ
11. 筋疾患 北國圭一,園生雅弘
脳神経内科領域の診療ガイドラインup date
6.脳卒中治療ガイドライン2015【追補2019含む】~脳出血 川上途行
こういう工夫でこんなに変わった! アドヒアランスやコンコーダンスを高めるリハビリテーション
10.変形性膝関節症 津田英一,中村太源・他
更生・康复・復健・リハビリテーション
第5回 物理医学の展開とリハビリテーション 江藤文夫
心に残ったできごと―リハビリテーション科の現場から
寝たきりになってしまった脳卒中患者はいつまでも寝たきりのままではない 高畠英昭
学会報告 第57回 日本リハビリテーション医学会学術集会
第57回 日本リハビリテーション医学会学術集会 横関恵美,福井遼太・他
臨床研究
回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者の自宅退院の可否を予測したロジスティック回帰分析のレビュー 徳永誠
臨床経験
両下腿義足歩行時の身体負荷軽減に関する検討を行った1症例 本田有正,武原格・他